はじめに
今週のリストは137曲だ。曲ごとにクレジットをたどっていくと、同じ姓の名前が何度も出てきた。クティ、マルサリス、ジル。父のバンドを率いる息子がいて、叔父と父と息子がひとつのリストにそれぞれ入っていて、父であり祖父である人の姓をグループ名につけた息子と孫たちがいる。この世を去った仲間の名前もいくつか見えた。坂本龍一、高橋幸宏、アルリンド・クルス(Arlindo Cruz)。
先週の地図に出てきた名前が、今週は場所を変えてまた出てくることもある。エズラ・コレクティヴのドラマーはラゴスのアルバムのプロデューサーとして、細野晴臣は同じアルバムの新しい版で、スタンディング・オン・ザ・コーナーはそこから出たひとりのソロ・シングルで戻ってきた。そこで今回は、受け継いだ人たちの線をたどって地図を描いた。ラゴスを出発し、イギリスとヨーロッパを過ぎ、東京とリオを経てニューヨークで終わる。23曲だ。
アフリカ
ラゴス — Seun Kuti & Egypt 80, 「DJB」
シェウン・クティはフェラ・クティ(Fela Kuti)の末息子で、エジプト80はフェラがアフリカ70の解散後、1970年代末から80年代初めにかけて新たに組んだバンドだ。シェウンは9歳ごろからこのバンドで演奏し、1997年に父が亡くなってからはバンドを率いている。「DJB」は11月6日に出る新作[Na Dem]の先行シングルだ。これに先立つ6月には、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロ(Tom Morello)が参加した「Na Dem」が先に出た。このアルバムのプロデューサーは、エズラ・コレクティヴのドラマーでありリーダーのフェミ・コレオソ(Femi Koleoso)だ。先週の地図の1曲目を開いた人が、今回はラゴスのバンドのアルバムを作った。シェウン・クティはこのアルバムについて、抵抗し、目を覚まし、人間らしさを手放さないための呼びかけだと語った。父が組んだバンドとともに、父が歌っていたやり方で、いまの話をしている。
ベルリン × ラゴス × バマコ — Jembaa Groove, 「Waka」 (feat. Fatoumata Diawara, The Cavemen)
ジェンバ・グルーヴはベルリンのバンドで、ハノーファーのアゴーゴー・レコーズ(Agogo Records)に所属している。レーベルの紹介によれば、ドイツのベーシストでプロデューサーのヤニク・ノルティング(Yannick Nolting)と、エボ・テイラー(Ebo Taylor)、パット・トーマス(Pat Thomas)、オルランド・ジュリアス(Orlando Julius)と演奏してきたガーナのパーカッショニスト、エリック・オウス(Eric Owusu)が2020年末に一緒に始めた。9月18日に出た4曲入りEP[Be A Lover]はベルリンとラゴス、ロンドン、アムステルダムのミュージシャンたちが一緒に作り、「Waka」は最後の4曲目だ。マリのシンガーソングライター、ファトゥマタ・ジャワラ(Fatoumata Diawara)とナイジェリアの兄弟バンド、ザ・ケイヴメン(The Cavemen)が参加している。ザ・ケイヴメンはベーシストのキングスリー・オコリー(Kingsley Okorie)とドラマーのベンジャミン・ジェームス(Benjamin James)兄弟のチームで、キングスリーはEPの4曲中3曲の共同プロデューサーだ。ロンドンのソウル・シンガー、アゼケル(Azekel)もこのEPの別の曲に参加している。この名前はイギリスの章でもう一度出てくる。
トゥバブ・ディアロ × スウェーデン — Wau Wau Collectif, 「Fonkal Say Wadiour」
ダカール近くの海辺の村トゥバブ・ディアロ(Toubab Dialaw)で2018年に始まった、セネガルとスウェーデンのミュージシャンの集まりだ。スウェーデンのミュージシャンでレーベル、シング・ア・ソング・ファイター(Sing A Song Fighter)を運営するカール=ヨナス・ヴィンクヴィスト(Karl-Jonas Winqvist)と、セネガルのベーシストでスタジオ・エンジニアのアルナ・カン(Arouna Kane)が中心だ。2021年のデビュー作[Yaral Sa Doom]について、バンドキャンプ・デイリーは、ヴィンクヴィストがカンとともに自由なアイデアと即興を促すやり方で録音を導いたと書いた。新作[Teranga]はアメリカ・ポートランドのサヘル・サウンズ(Sahel Sounds)から出て、26人のミュージシャンが参加した。「Fonkal Say Wadiour」は12曲中4曲目だ。プロデューサーはカンとヴィンクヴィストのふたりだ。
ベニンシティ — Rema, 「Oh No」
2000年にナイジェリアのベニンシティで生まれたレマは、マヴィン(Mavin)とジョンジング・ワールド(Jonzing World)に所属する歌手だ。セレーナ・ゴメス(Selena Gomez)と組んだ「Calm Down」のリミックスはビルボード・ホット100の3位まで上がり、アルバム[Heis]は2025年グラミー賞の最優秀グローバル・ミュージック・アルバムにノミネートされた。「Oh No」は9月11日に出たシングルで、つながるアルバムはまだない。同じベニンシティを拠点とする新人パブライモ(PaBrymo)がシンガーのテイ・イワール(Tay Iwar)と歌った「Fancy」もリストに入っている。ひとつの都市から、世界のチャートに上った歌手と、EPを出したばかりの新人が同じ週のリストにいる。
イギリス
マンチェスター — Daley, 「Consequences」 (feat. Keyon Harrold)
ゴリラズ(Gorillaz)の「Doncamatic」で名を知られたシンガー、デイリーが9年ぶりの3作目[Strange Nature]を9月18日に出した。「Consequences」は4曲目で、ミズーリ州ファーガソン出身のトランペット奏者キーヨン・ハロルド(Keyon Harrold)が参加し、サウス・ロンドンのドラマー、ユセフ・デイズ(Yussef Dayes)がドラムを叩いた。9曲目「Compass」ではロバート・グラスパー(Robert Glasper)がピアノを弾き、5曲目「Falling Deep」とともに2曲ともリストに入っている。マーシャ・アンブロージアス(Marsha Ambrosius)、ブルー・ラブ・ビーツ(Blue Lab Beats)もアルバムのあちこちに名前がある。デイリーはこのアルバムを、人生はいつも自分が予測し、願い、期待するとおりに展開するわけではない、と説明した。9年間アルバムを出さなかった人が戻ってくるにあたって、サウス・ロンドンのドラマーとミズーリ出身のトランペット奏者を一緒に呼んだ。
リーズ — Gotts Street Park, 「Flowers」 (with Pip Millett)
リーズのトリオ、ゴッツ・ストリート・パークは、ベースとプロデュースのジョシュ・クロッカー(Josh Crocker)、キーボードのトム・ヘンリー(Tom Henry)、ギターのジョー・ハリス(Joe Harris)からなり、名前はリーズのゴッツ・ストリートとアームリー(Armley)のゴッツ公園から取った。2023年にブルー・フラワーズ(Blue Flowers)からデビュー作[On The Inside]を出した。「Flowers」は10月16日にプレイ・イット・アゲイン・サム(Play It Again Sam)から出る2作目[Somewhere Between]の先行曲で、リーズ近郊のチェアワークス・スタジオで録音した。シンガーのピップ・ミレット(Pip Millett)とは、2020年「Change My Ways」、2023年「Got To Be Good」、そして「Fool For Love」に続いての再会だ。「Flowers」はミレットのアルバム制作セッションから生まれた曲だ。ミレットは、悪い日が永遠に続くわけではないと思い出させてくれる歌だと語った。ステレオフォックスは、のんびりした日曜日のソウル・エナジーだと書いた。
ダラス → オランダ × ロンドン — Sandra St. Victor, 「Moonchild」 (feat. Kaidi Tatham)
サンドラ・セント・ヴィクターはダラスで生まれ、ブルックリンで育ち、いまはオランダに住んでいる。ザ・ファミリー・スタンド(The Family Stand)の創設ボーカルで、プリンス(Prince)、チャカ・カーン(Chaka Khan)、カーティス・メイフィールド(Curtis Mayfield)、ティナ・ターナー(Tina Turner)と仕事をしてきた。9月18日にマザー・タン・レコーズ(Mother Tongue Records)から出た[Eleven]は10数年ぶりのソロ・アルバムだ。「Moonchild」は3曲目で、キャプテン・スカイ(Captain Sky)の曲を新たに解釈したもので、この夏12インチ「Life / Moonchild」として先に出た。参加したカイディ・テイタム(Kaidi Tatham)は、バグズ・イン・ジ・アティック(Bugz in the Attic)や、デーゴ(Dego)との2000ブラック(2000Black)でウェスト・ロンドンのブロークン・ビートを作った人だ。マザー・タンの常連コラボレーター、マーク・ド・クライヴ=ロウ(Mark de Clive-Lowe)もアルバムの「Dizzy」に参加している。ある媒体は、テイタムが複雑なブロークン・ビートをタペストリーのように織り込んだと書いた。チャカ・カーンの名前は北米の章でまた出てくる。
チューリッヒ × ロンドン — Okvsho, 「Roottree」 (with Tenderlonious)
オクショはチューリッヒの兄弟、ゲオルク・キス(Georg Kiss)とクリストフ・キス(Christoph Kiss)のチームだ。ドラムとキーボードを分担し、自らを「サウンドクラウド世代」と呼び、ヒップホップを通じてジャズに入ったと語る。自主レーベルのカレント・ムーヴス(Current Moves)から9月18日に[Frozen Flashes]を出した。一部をロンドンで録音した即興セッションをサンプリングし直し、歌に編み上げるやり方で作った。「Roottree」は7曲目で(ヴァイナル表記は「Rootree」)、ロンドンのサックス・フルート奏者で22aレーベルを立ち上げたテンダーロニアス(Tenderlonious)が参加している。6曲目「La Joconde」と8曲目「Place of Two」もリストに入っている。このアルバムの別の曲にアゼケルが参加している。先にベルリンのジェンバ・グルーヴのEPで見たあの名前だ。兄弟が作ったレーベルから、兄弟が積み上げた即興が1枚のアルバムになった。
ヨーロッパ大陸
ヘント — Charlotte Adigéry & Bolis Pupul, 「Googoo Gaga」
ベルギー・ヘントのデュオだ。2022年のデビュー作[Topical Dancer]を、ソウルワックス(Soulwax)が立ち上げたレーベル、ディーウィー(DEEWEE)から出した。「Googoo Gaga」は9月16日に出たシングルで、そのアルバム以来初めて出す曲だ。プロデューサーはソウルワックスのデヴィッドとステファン・デワーレ(David & Stephen Dewaele)兄弟だ。ミュージック・ビデオは、ヘントに伝わる民話の人物マンメロッカー(De Mammelokker)をもとに、レナート・マドゥ(Lennert Madou)が監督した。ふたりはこの曲をこう説明した。子どもひとりを育てるには村全体が必要だというけれど、実際はひとりでやっている、疲れ果てて、自分を差し出して、手に負えないそのすべてを抱きしめる歌だ、と。タイトルは赤ちゃんの喃語のように読める。
ロスキレ → ロンドン — Marie Dahlstrom, 「Joined」 (with Butcher Brown)
デンマークのロスキレで生まれ、ロンドンで活動するシンガーだ。自主レーベルJFHレコーズから9月18日に3作目[MARIE]を出した。「Joined」は5曲目で、バージニア州リッチモンドのジャズ・ファンク5人組、ブッチャー・ブラウン(Butcher Brown)が参加している。ブッチャー・ブラウンのドラマー、コーリー・フォンヴィル(Corey Fonville)はこのアルバムのメイン・プロデューサーを務めた。ダールストロムはこの曲の始まりをこう伝えた。ピアノでボイスメモを残してコーリーに送った、曲は次男レヴィが生まれ、家族を新しく、より強く結びつけてくれた話だ、と。すぐ次の曲「Take It Out On You」もリストに入っている。ヘントのデュオが子育ての疲れを歌ったなら、ロンドンのシンガーは子どもが家族を結ぶかたちを歌った。
アテネ — Σtella, 「Belinda」
アテネのシンガーソングライター、ステラはサブ・ポップ(Sub Pop)所属で、名前の最初の文字をギリシャ文字のシグマで書く。2025年のアルバム[Adagio]以来初めてのシングル「Belinda」が9月16日に出た。ジェイミー・xx、ワイズ・ブラッド(Weyes Blood)と仕事をしたロディ・マクドナルド(Rodaidh McDonald)と共同でプロデュースし、バンド!!!のラファエル・コーエン(Rafael Cohen)が録音に参加した。コーエンは[Adagio]にも参加していた。雑誌ワンダーランド(Wonderland)は[Adagio]について、晴れた夏の夜にワインを飲みながらオリーブを食べるようだと書いた。彼女は10月9日、アテネのボーダーライン・フェスティバルのステージに立つ。東京の章にも「Stella」という曲がひとつあるが、ふたりの間に関係はない。
東アジア
東京 — 石若駿 トリオ+1, 「Old Friends II」
ドラマーの石若駿は札幌ジュニア・ジャズスクールを経て東京藝術大学を卒業し、映画[BLUE GIANT]のドラムを担当した。ピアノの高橋佑成、ベースのマーティ・ホロベック(Marty Holoubek)と組んだトリオが、9月2日に2作目[Mabui]をユニバーサルから出した。1作目[Live at ALFIE “Temporal Cubic”]はミュージック・アワード・ジャパン2026のジャズ・アルバム部門にノミネートされた。「マブイ」は沖縄の言葉で魂という意味だ。今年3月11日の1日だけで録音し、曲はすべて石若が書いた。全曲にゲストで入ったテナー・サックスの馬場智章は札幌時代からの友人で、[BLUE GIANT]でもサックスを吹いた。アデレードからメルボルンを経て2018年に東京へ来たホロベックまで、4人全員が日野皓正グループのメンバーだ。「Old Friends II」は5曲目だ。
東京 — 細野晴臣, 「Stella (Yours Sincerely Version)」
先週この地図に細野の新作[Yours Sincerely]があった。1週間後の9月18日、同じアルバムに1曲を加えたデジタル版[Yours Sincerely (Stella Edition)]が予告なしに出た。加わった11曲目が「Stella」だ。原曲は、細野が2002年に高橋幸宏と結成したデュオ、スケッチ・ショウ(SKETCH SHOW)の2003年のアルバム[LOOPHOLE]に収録されていた。高橋はもうこの世にいない。日本の音楽メディアBARKSは、新しいバージョンを静かなギターの音と歌で満たした曲だと伝え、先に旅立った友人たちへの記憶がにじんでいると書いた。版に合わせてジャケットも、黒地に夜空の星を加えた絵に変わった。イエロー・マジック・オーケストラの3人のうち残ったひとりが、かつての仲間と作った歌をひとりで歌い直した。
ドイツ × 東京 — Alva Noto & 坂本龍一, 「Conversation 1」
アルヴァ・ノト、つまりカールステン・ニコライ(Carsten Nicolai)のレーベル、ノトン(NOTON)が9月18日に[12 Conversations]を出した。坂本が最後のソロ・アルバム[12]を作っていた2022年11月から12月にかけて、ふたりがやり取りした音楽を録音したものだ。最初からリリースを計画した作品ではなかった。坂本は2023年3月に亡くなった。ふたりは2000年代初めの[Vrioon]から一緒にアルバムを出し、映画[レヴェナント]の音楽もともに作った。ニコライは、この最後のやり取りの中でも先の計画は形をとり続けていた、終わりがあると分かっていながらも新しい考えの力を固く信じていた、と記した。同じ日、かつてのバンド仲間の細野は亡き友と作った歌をもう一度出し、坂本の長年の協力者はふたりの最後の対話をアルバムにした。
東京 × ソウル — 7co, 「sayonara radio」 (feat. oceanfromtheblue)
7coはボーカルの芦田菜名子とプロデューサーRYUJAのデュオで、この夏、アニメ『正反対な君と僕』第2期のオープニング「猫じゃらし」でメジャー・デビューした。9月16日に出た「sayonara radio」には韓国のR&Bシンガーソングライター、オーシャンフロムザブルー(oceanfromtheblue)が参加している。7coが韓国のミュージシャンと組んだ初めての曲だ。両者は2025年に韓国のメロンのイベントで出会い、曲はメールをやり取りしながら離れたまま作った。作詞はオーシャンフロムザブルーと芦田菜名子、作曲はそのふたりとRYUJAが共同で手がけ、日本語と韓国語、英語で歌う。タイトルの「サヨナラ」と「ラジオ」が何を指すのかは、実際に聴いて確かめてほしい。
ラテンアメリカ
リオ — Gilsons, 「Semeia (Remix)」 (with Mulú)
ジルソンスは2018年にリオで結成されたトリオだ。ジョゼ・ジル(José Gil)はジルベルト・ジルとフローラ・ジル(Flora Gil)の息子で、父のバンドのドラマーでもあり、フランシスコ・ジル(Francisco Gil)はプレタ・ジル(Preta Gil)の息子、ジョアン・ジル(João Gil)はナラ・ジル(Nara Gil)の息子でジルベルトの初孫だ。ひとりは息子、ふたりは孫というわけだ。原曲「Semeia」は3月に出た2作目[Eu Vejo Luz Em Maior Proporção Do Que Eu Vejo A Escuridão]に収録され、アルバムはジョゼ・ジルがプロデュースした。スポティファイ上では9月1日、ムルー(Mulú)が参加したリミックスがシングルとして出た。ブラジルのメディア、アウマ・プレタは、この曲は時間をかけて受け継がれていくことと、ケアについての歌だと書いた。先週の地図で、祖父はフェアウェル・ツアーのライブ音源を1巻ずつ出していた。「セメイア」はポルトガル語で種をまくという意味だ。
サルヴァドール × マドゥレイラ — Luedji Luna, 「O Bem」 (with Arlindo Cruz)
ルエジ・ルナはバイーア州サルヴァドール出身のシンガーだ。2017年に[Um Corpo no Mundo]でデビューし、2025年には[Um Mar Pra Cada Um]と[Antes Que A Terra Acabe]の2枚を1週間も空けずに出した。「O Bem」はもともと、アルリンド・クルスがデウシオ・ルイス(Délcio Luiz)と一緒に書き、2011年のアルバム[Batuques e Romances]に収めた曲だ。アルリンド・クルスは1958年にリオのマドゥレイラで生まれ、サンバ・グループのフンド・ジ・キンタル(Fundo de Quintal)で12年を過ごし、2025年8月8日に66歳で亡くなった。ふたりの名前が並んだこのバージョンは今年8月初めに出た。アルリンドの声がどのような形で入ったのかは、まだレーベル資料で確認できていない。バイーアの歌手が、リオのサンバ作曲家の一周忌を前に彼の歌を歌った。
北米
ニューオーリンズ — Branford Marsalis Quartet, 「Autumn Serenade」 (with Dianne Reeves)
サックス奏者ブランフォード・マルサリスは2024年にニューオーリンズへ戻った。彼のカルテットが、デトロイトで生まれデンバーで育ったシンガー、ダイアン・リーヴス(Dianne Reeves)とともに、9月18日にブルーノートから[Dedicated To You]を出した。1963年の[John Coltrane and Johnny Hartman]の6曲にコルトレーンの演奏曲を加えて演奏し直したアルバムで、コルトレーン生誕100周年に合わせた作品だ。ピアノのジョーイ・カルデラッツォ(Joey Calderazzo)、ベースのエリック・レヴィス(Eric Revis)、ドラムのジャスティン・フォークナー(Justin Faulkner)が参加した。「Autumn Serenade」はブルーノートが公開したトラックリストの1曲目だ。イギリスのジャズ・ブログ、マールバンクは五つ星をつけ、いま出ているコルトレーン・トリビュート作をすっかり色あせさせると書いた。この曲の次の席に、彼の甥がいる。
ニューヨーク — Slauson Malone 1, 「Porcelain」
スローソン・マローン1はジャスパー・マルサリス(Jasper Marsalis)の名義で、彼はトランペット奏者ウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)の息子だ。ブランフォードにとっては甥にあたる。2010年代後半まで、ブルックリンのコレクティヴ、スタンディング・オン・ザ・コーナーにいた。先週の地図でソランジュとソニア・サンチェスをひとつの曲に呼び集めたあのチームだ。2023年にワープ(Warp)と契約して[EXCELSIOR]を出し、9月15日、3年ぶりの新曲としてレッド・ホット・チリ・ペッパーズの[Californication]収録曲「Porcelain」をカバーした。ステレオガムは、もともと柔らかく、遅く、最小限だった曲を、もう少し奇妙な方向へ押し出したと評した。そして今回のリストには、ウィントンが率いるジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラの[Essentially Ellington 2027]から、ビリー・ストレイホーンの「A Midnight in Paris」(スポティファイ表記「Midnight in Paris」)も入っている。叔父と父と息子が、ひとつのリストにそれぞれのアルバムで集まった。
ニューヨーク — Tyreek McDole, 「she’s alive」
ハイチ系アメリカ人のバリトン・シンガー、タイリーク・マクドールはオバーリンを卒業し、2023年のサラ・ヴォーン国際ジャズ・ボーカル・コンペティションで優勝した。本人が明かした経歴によれば、高校生だった2018年、ジャズ・アット・リンカーン・センターのエッセンシャリー・エリントン・コンペティションで優秀ボーカル賞を受けた。ジャズ・アット・リンカーン・センターが毎年開く、前の曲のアルバムが生まれたあのコンペティションだ。「she’s alive」は11月6日にアートワーク・レコーズ(Artwork Records)から出る2作目[Chroma]の3曲目で最初のシングル、トランペット奏者シオ・クローカー(Theo Croker)がプロデュースした。アンドレ3000(André 3000)の曲をカバーしたものだ。評論家ウィル・フリードウォルド(Will Friedwald)はデビュー作のライナーノーツで、彼を世代のジャズ・ボイスと呼んだ。
LA — Miguel Atwood-Ferguson, 「Compassion」 (feat. Flying Lotus, Immanuel Wilkins, David Virelles)
LAのトパンガ・キャニオンで育ち、USCでヴィオラを学んだミゲル・アトウッド=ファーガソンは、2009年にJ・ディラ(J Dilla)へのトリビュート[Suite for Ma Dukes]を書いて指揮した。10月30日にインパルス!(Impulse!)から出る[ANANTA: Spirit of Coltrane]は、シャバカ・ハッチングス(Shabaka Hutchings)、ブランディー・ヤンガー(Brandee Younger)、ジェフ・パーカー(Jeff Parker)、ジョエル・ロス(Joel Ross)ら21人が参加したコルトレーン・トリビュート作だ。最初のシングル「Compassion」は2曲目で、コルトレーンが1966年に[Meditations]に収めた曲だ。フライング・ロータス(Flying Lotus)、アルト・サックスのイマニュエル・ウィルキンス(Immanuel Wilkins)、キューバのピアニスト、ダビド・ビレージェス(David Virelles)が参加した。前のブランフォードと同じ年に、同じ人をたたえている。同じLAから、デクスター・ストーリー(Dexter Story)がスーダン・アーカイヴス(Sudan Archives)、カマシ・ワシントン(Kamasi Washington)と作った「Mama」もリストに入っている。
ワシントンDC — Meshell Ndegeocello, 「With God on Our Side」 (with Bill Callahan, Chris Thile)
10月2日にブルーノートから出るミシェル・ンデゲオチェロの[Synonym]は、名曲15曲をほかの歌い手たちとのデュエットで歌い直したアルバムだ。最後の曲で最後の先行シングル「With God on Our Side」は、ボブ・ディランが1964年に[The Times They Are a-Changin’]に収めた歌で、ビル・キャラハン(Bill Callahan)とクリス・シーリ(Chris Thile)が一緒に歌った。ンデゲオチェロは、キャラハンの声は魅惑的で人を引き込むと語った。共同プロデューサーのデヴィッド・ギャムソン(David Gamson)は彼女の初期の2作を手がけた人で、1996年にチャカ・カーン(Chaka Khan)とンデゲオチェロが組んだ「Never Miss the Water」もプロデュースした。そのチャカ・カーンが今回の[Synonym]にも参加し、9月18日には自身のアルバム[Chakzilla]を出した。シーア(Sia)と組んだ「Cool You Down」もリストに入っている。30年前にひとつの曲で出会ったふたりが、同じ週に互いの名前をまた載せた。
フィラデルフィア × Backwoodz — Curly Castro, 「Black Don’t Crack」
フィラデルフィアのラッパー、カーリー・カストロはプレムロック(PremRock)とシュラプネル(ShrapKnel)としても活動している。9月18日、ビリー・ウッズ(billy woods)が立ち上げたバックウッズ・スタジオズ(Backwoodz Studioz)から、5年ぶりのソロ・アルバム[Yaphet]を出した。タイトルは俳優ヤフェット・コットー(Yaphet Kotto)から取り、1970年代のブラックスプロイテーション映画を下敷きにしている。ミルウォーキーのローカスト(Locust)がアルバム全体をプロデュースした。1曲目「Black Don’t Crack」は複数のラッパーが順に歌う6分の曲で、ニュージャージーのファットボーイ・シャリフ(Fatboi Sharif)、コロンバスのブループリント(Blueprint)、ボルチモアのブライアン・エナルズ(Brian Ennals)、シカゴ出身でブルックリンで活動するスケッチ185(SKECH185)、シアトルのAJスウェード(AJ Suede)、そしてビリー・ウッズが次々と入ってくる。ステレオガムは、バックウッズ・スタジオズのアベンジャーズが集結する音だと書いた。エナルズは今年プロデューサーのブロックヘッド(Blockhead)とアルバム[Boatshoes]を出したが、そのブロックヘッドが大学時代からコンビを組むイソップ・ロック(Aesop Rock)と11月に出す[Trouble Mountain]の「Trouble Trouble」も今回のリストに入っている。
おわりに
23曲を都市ごとに並べてみると、最初に目にとまった姓がまた残った。シェウン・クティは父のバンドを率い、ジャスパー・マルサリスのシングルは父のオーケストラと叔父のカルテットのあいだに置かれ、ジルベルト・ジルの息子と孫たちは、父であり祖父である人の姓をグループ名に使っている。細野晴臣は先に旅立った友と作った歌をひとりで歌い直し、同じ日にアルヴァ・ノトは坂本龍一との最後の対話をアルバムにした。
受け継いだ人たちの曲を集めたからといって、順番まで決まっているわけではない。リストをシャッフルして流せば、ラゴスの次に東京が、ヘントの次にフィラデルフィアが出てくる。その順番は聴く人が決めればいい。
来週はまた、誰の名前が別の場所に戻ってくるのか分からない。

